第2回 現代戦車の内部配置──イラストで見る各区画のパーツ 
連載「戦車の戦い方」

本連載は、「現代戦車はどう戦うか」といった部分にのみ特化して解説していくものです。

まず最初は戦車とはどのようなものかを理解してもらう必要があるために、今回も基本編として、戦車の内部配置はどうなっているかを解説していく。

ここではアメリカ軍のM1戦車を例に、内部構造や操縦席・砲手席・車長席の各パーツを見ていきたい。

乗員を守る工夫がつまった「内部配置」

今回はアメリカのM1エイブラムスを例に挙げ、戦車の内部がどのようになっているのかをイラストを使い解説する。戦車本来の構造が分かり易いので、初期のM1A1を取り上げることとする。

テネシー陸軍国家警備隊のM1戦車。車長(左上)と装填手(右上)、操縦手(下)がハッチから顔を出している(Photo:U.S. Army)

M1の特徴の一つに、開発段階において生存性の向上が徹底して図られたことが挙げられる。そのため車内は区画化され、乗員を可能な限り火災や砲弾の誘爆から守るように工夫してある。

ただNBC兵器に対する防御策は、乗員が防護服および防護マスクを着用するというもので、車内を加圧して外部から汚染された空気の侵入を防ぎ、防御フィルターで浄化された空気を乗員に提供するというものではなかった。

M1と同世代の戦車ではNBC防護1には後者の方法が一般的で、この点に関しては他国の戦車に遅れていた(のちに後者の方法に改修されている)。

車内は、前方向から操縦手が入って戦車を動かす操縦室があり、その後部には戦闘室がある。戦闘室内部には砲弾や機銃弾などを収納するラックなどが設置されており、上部には旋回リングを介して砲塔が載っている。

戦闘室の後ろにはバッフルプレート2を挟んで動力室があり、ガスタービン・エンジンやトランスミッションなどの動力・駆動装置を一体化させたパワーパック3が搭載されている。

砲塔内部には車長、砲手および装填手が搭乗し、主砲をはじめとする戦闘兵器も集中して置かれている。また、イラストには描いていないが、戦車を動かすための燃料を搭載するタンクは6基あり、車内に分散配置されている。

M1の燃料が搭載されている場所。車体全部の操縦席両側に各568.9リットル、動力室タンクの右側に218.1リットル、左側に328.9リットル、左右スポンソン(張り出し部)の上タンクの右側に171リットル、左側に223.3リットルが搭載されている(合計912.5リットル)(Illustration:坂本 明)

パーツ解説

砲口照合装置(マズル・リファレンス装置)……主砲の射撃精度を維持するための装置。砲口上部に取り付けた鏡へレーザーを照射して、砲身の曲がりや歪みを測定する。そして弾道計算機へデータを送って修正値を算出し、補正を行なう
M256型120mm滑空砲砲身部……砲身内部には腔綫(こうせん)が刻まれておらず、砲弾の発射で摩耗しないように硬質クローム・メッキが施されている
噴煙器(エバキュエーター)……砲を撃ったときに発生する高圧ガスが、戦闘室内に吹き返してくるのを防ぐ装置
7.62mm同軸機銃
砲塔前部装甲ボックス……装甲が一番厚い砲塔正面と車体正面は、装甲鋼板で造られたボックス状になっている。内部はハニカム構造4にされた劣化ウランなどの材質の異なる防弾構造材が重ねて封入され、複合装甲になっている。ちなみに劣化ウランの装甲材が導入されたのは1990年代始めで、重装甲型のM1A1 HAからとなる

砲耳……砲の砲塔への取り付け部
砲仰俯装置……砲の仰俯角5(ぎょうふかく)を調整する
M256型120mm滑空砲基部……砲弾発射時の反動による砲の後退を制御する砲駐退複座機や、砲弾を装填し砲尾を閉鎖する閉鎖機、砲を保持し砲塔に取り付けるための砲架で構成されている
砲手用照準装置……昼間用の光学式潜望鏡と夜間用の赤外線映像装置を組み合わせた照準装置。ちなみに目標への照準や目標までの測距は、砲手が照準装置を使って行なう。その後の、砲弾を命中させるための弾道計算や最終的な砲の旋回や仰俯角などの微調整は、弾道計算機を中心とした射撃統制システム(FCS)が行なう
車長用12.7mm機銃

M1A1戦車の内部。M1A1は、1981年にアメリカ軍が採用したM1の改良型で、主砲を51口径105mmライフル砲から44口径120mm滑空砲に換装し、電子機器類もアップデートされている。いくつかのタイプがあり、現在も陸軍と海兵隊で運用されている(Illustration:坂本 明)[クリックで拡大可]

車長用照準サイト……光学式で砲手用照準装置と接続されている
装填手用7.62mm機銃
車長用キューポラ火器照準器および動力装置
車長用パワーコントロール・ハンドル……ハンドルを操作することで、車長がレーザー測距装置の発振や、砲・同軸機銃の射撃、砲塔の旋回を行なえる
バスル部砲弾収納庫……砲塔後部の張り出しに設置された砲弾庫で、戦闘室とは装甲板のⒶアクセスドアで仕切られている。また砲弾庫が被弾して砲弾が誘爆した場合は、天井部のⒷ装甲カバーが吹っ飛ぶことで爆風や火災を上部へ逃し、戦闘室へのダメージを極力軽減する構造になっている

アクセスドアと装甲カバーの役割(Illustration:坂本 明)

無線機アンテナ
環境センサー……弾道計算に必要な気象条件因子を測定するためのセンサー装置
砲塔外部ラック
エンジン排気誘導ダクト
冷却気送風ファン……潤滑油などへ送風を行なって冷却するラジエターの機能を果たす

脚注

  1. NBC防護……核・生物・化学(Nuclear, Biological and Chemical)兵器からの防護度
  2. バッフルプレート……戦闘室と動力室を仕切るプレートで、一方が被弾などで爆発や火災を起こした際に、もう一方へ被害が及ぶことを最小限に防ぐ
  3. パワーパック……エンジンと変速機を合わせた動力装置
  4. ハニカム構造……ハチの巣(Honeycomb)のように六角形を隙間なく並べた構造
  5. 仰俯角……水平を基準とした上下方向の角度

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ABOUT US

坂本明軍事ライター、イラストレーター
(さかもと・あきら)
長野県出身。東京理科大学卒業。
雑誌「航空ファン」編集部を経て、フリーランスのライター&イラストレーターとして活躍。
著書に『最強 世界の歩兵装備パーフェクトガイド』『最強 世界のジェット戦闘機図鑑』『最強 自衛隊図鑑』『世界の軍装図鑑』(学研プラス)など多数。
1/28に最新刊『最強 世界の空母・艦載機図鑑』(ワン・パブリッシング)を出版。