第5回 戦車砲のメカニズム(3/3)──滑腔砲とライフル砲の違い 
連載「戦車の戦い方」

従来、戦車砲はライフリングが刻まれたライフル砲であったが、1960年代に滑空砲が登場することで大きな技術革新が起きた。
戦車砲の回の最後に、滑腔砲とライフル砲では何が違うかを解説する。

滑腔砲とライフル砲

第二次世界大戦後に開発されたM60パットンやレオパルド1などの戦車では105ミリ砲、ソ連のT-54/55シリーズでは100ミリ砲が搭載されている。これらの砲はいずれもライフル砲であった。

ライフル砲は砲身の内側にライフリング(腔線)とよばれる螺施(らせん)が刻まれており、撃ち出される砲弾に高速回転を与え弾道を安定させる。従来の火砲は戦車砲に限らず、ほとんどがライフル砲である。

しかし戦車に搭載する火砲が大口径化するについてライフル砲では限界が出てきたため、そこに登場したのが滑腔砲であった。滑腔砲は1950年代に開発が始まり、世界に先駆けてソ連の戦車が実戦配備している。

1965年のモスクワ赤の広場で行なわれた「対ドイツ戦勝20周年祝典パレード」で公式に公表されたT-62がそれで、115ミリ滑腔砲 U-5TSを搭載していた。

世界に先駆けて滑腔砲を装備して西側諸国に脅威を与えたT-62戦車。写真のスモークを炊くT-62は1984年撮影のもの(Photo:The U.S. National Archives)

当時、西側諸国の装備する戦車に滑腔砲を搭載したものはなく、当時主流だった105ミリ 51口径ライフル砲(ロイヤル・オードナンスL7)では、T-62の前面装甲を貫通するには1,500メートル以下の距離に接近しなければならなかった。

一方、APFSDS弾1(装弾筒付翼安定徹甲弾)を発射できる滑腔砲を搭載したT-62は、1,500メートル以上の距離で西側戦車の前面装甲を貫通することができた。

西側では1960年代後半になって、ラインメタル社が105ミリと120ミリの2種類の滑腔砲の開発に成功。ソ連のT-62あるいは次期主力戦車に対抗するために、2,000メートル以上の距離で装甲を貫通できる120ミリ滑腔砲(ラインメタル120ミリL44:44口径120ミリ滑腔砲)がレオパルド2(A0-5)に搭載された。この120ミリ滑空砲はアメリカのM1A1/A2や日本の90式戦車、韓国のK1A1などにも搭載されている。

スローモーションカメラで、発射されたAPFSDS弾が飛んでいく様子を撮影した映像。装弾筒を分離し、フィンをもつ弾芯が回転することなく飛んでいくことが分かる(YouTube動画「discarding sabot dart slow motion 6000 frames per second」より。動画タイトルのクリックでYouTubeへ移動)

脚注

  1. APFSDS……細く長い弾芯をフィンと装弾筒によって真っ直ぐ飛ばす徹甲弾(詳しくは後の回で)

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坂本明軍事ライター、イラストレーター
(さかもと・あきら)
長野県出身。東京理科大学卒業。
雑誌「航空ファン」編集部を経て、フリーランスのライター&イラストレーターとして活躍。
著書に『最強 世界の歩兵装備パーフェクトガイド』『最強 世界のジェット戦闘機図鑑』『最強 自衛隊図鑑』『世界の軍装図鑑』(学研プラス)など多数。
1/28に最新刊『最強 世界の空母・艦載機図鑑』(ワン・パブリッシング)を出版。