これまでアラート待機時に、限られた人員でどのように戦闘機の整備や準備を行なってきたかを紹介した。
今回は少し視点を変え、航空自衛隊の戦闘機整備員から見たF-4とF-15の違いについて話してもらおうと思う。
F-15と比べ、F-4は機材や人員が多く必要
基地上空をフライパスするF-4のエンジン音が聞こえる。遅い時間で上がった夜間飛行訓練が終わって帰ってきたのだろう。
百里基地のアラートハンガー(格納庫:Alert Hunger)は、F-15でもF-4でも待機できる設備を持っている。とはいっても元々百里基地は偵察航空隊も入れて「F-4のみで3個飛行隊」が所属する基地だったため、F-4用に作ったアラートハンガーにあまり周辺機材の必要がないF-15を入れているだけだ(当時)。
なので、待機室の居住スペースはF-4を運用するのに適した対応した広さになっていた。
F-15とF-4が待機している場合で目立って違うのは、まず人数が違う。単座と複座でパイロットの人数が違うのは当然だが、整備員もF-4が1機につき3名に対し、F-15は2名で対処する。
プリタクシーチェック(離陸前の作動確認:Pre-Taxi Check)を完了している5分待機の場合、F-15は自力でエンジン始動ができるのでパネルを閉める量も極めて少なく、人数を要さず発進できる。
しかしF-4の場合は外部電源とエンジン始動用のエア1を必要とするので、5分待機の状態でもエンジン始動後に電源ケーブルと2本のエアホースを片付け、そのために開けてあったアクセスパネルの数十本のファスナーを閉めてパネルを閉めなくてはならない。そのためインターホンを繋いでいるクルーチーフの他に、2名で対処しないと時間がかかりすぎるのである。
ここで通常のエプロン(駐機場:apron)でのエンジン始動を見慣れている人は、2本のエアホースと言われて「あれ?」と思うかもしれない。エプロンでは起動車からのホース1本を付け替えて2本のエンジンを回しているが、アラートでは2本のホースを左右それぞれのエンジンに繋いでエンジンを始動している。
なお、起動車というのは、電源とエアの両方を供給できる器材のことで、搭載したガスタービン・コンプレッサーによってF-4にエアを送り込んでエンジンを回転させ始動させる。また同時に、F-4が機体に搭載するバッテリーではすべての電力を賄えないので(というより必要最小限の電気しか供給できない)、整備用の電力も供給する。F-4(RF-4)用はKM-3で、T-2用のKM-4などもある。
さらに、参考までに付け加えておくと、T-2とF-1のエンジンは双発だが、エアの挿入口は一つしかないので、バルブで左右のエンジンに送るエアを切り替えていた。電源のオン/オフ、エアのオン/オフの操作盤は格納庫内前方の壁面にあり、操作はインターホンを付けたクルーチーフが行なう。
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