手間がかかる奴ほど愛おしい!?─整備員から見たF-15とF-4の違い

一方、コックピットスタンバイではF-4のほうが便利!?

話をアラートに戻そう。

先述した通り、F-15はエンジンを回さないと電源が入らない。というより外部電源だけを入れてもグランドクーラーを付けないと電子機器には電源が入らないので、電源を入れたチェックの際はエンジンを回すことが常である。

一方、F-4は外部電源だけでほぼ全部の電源が入るので、外部電源を供給すればエンジンを回す必要がない。

この差はコックピットスタンバイの際に違いが出る。F-4の場合、コックピットスタンバイのときはパイロットが乗り込み、外部電源を入れてスタンバイする。当然インターホンも入るので、パイロットとクルーチーフの会話は容易で、長いコックピットスタンバイのときでも雑談などで気を紛らわすことも可能である。

待機を経て滑走路へ向かうF-4(Image:YouTube「航空自衛隊チャンネル」動画のスクリーンショット[トリミング]。画像クリックで動画へ移動)

この点F-15の場合は、上記の理由でコックピットスタンバイでもほぼエンジンを回しながら待つことになる。

スクランブルに至らずコックピットスタンバイが解除になった場合、F-4はそのまま待機に就けるが、F-15はエンジンを回した分の燃料を補給しなければならないので二度手間になる。

なのでトータルで見た際、どちらが有利かの差はあまりない。

2020年末、F-4の部隊運用が終了した。不要になったF-4のみが使っていた設備をどうするのか興味深いところだが、機会があったら知り合いに聞いてみようと思う。

(Illustration:渡辺悟志)

連載「元F-15機付長が語る 戦闘機整備員の世界」第3回─終─


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渡辺悟志元航空機整備員(航空自衛隊)、イラストレーター
(わたなべ・さとし)
F-15J/DJ、F-4EJの航空機整備員として2002年まで航空自衛隊第7航空団飛行群に22年間勤務し、機付長から同乗検査員、フライトチーフまでを歴任。整備経験のある機種はF-104J、F-1、T-33A、T-2、T-4。
航空機整備の傍、イラストの特技を生かして204飛行隊マークデザインや、パッチ等グッズデザイン、ミスティックイーグルなどの戦技競技会特別塗装、204飛行隊F-15改編10周年塗装などの記念行事特別塗装などを多く手がける。
現在はフリーイラストレーター/グラフィックデザイナーとして、ミリタリー以外のジャンルでも精力的に活動中。