アルディス式の照準と測距の仕組み
アルディス式筒形照準器の照準と測距の仕組みを見ていきます。
まずは照準のやり方からですが、これは単純明快です。この筒型の照準器を覗くと、[図3]のような円環が見えます。
筒内の中心に円環が見えれば、そこが弾道の集中点です(視線が筒の前後を結ぶ線に平行となり、その先に弾道の集中点がある)。
よって、円環は測距と同時に照準点の役割も果たしています。
円環が筒内の中心点に見えていなければ照準は取れないので、そのときは頭の位置を調整する必要があります。
それでも円環式照準器の照準よりは楽で、これがアルディス式の利点の一つでした。
そして、測距もこの円環で行ないます。ただしやり方も原理も第2回で見た円環式照準器と変わらないので、ここでは説明を省きます。
この円環がこのアルディス式の肝なのですが、これは照準器の中にあり(ガラス板に書き込まれて入っている)、本来なら目のピントが合わず、まともに見ることはできないはずです。
この問題を平行光レンズの採用で解決してしまったのが、アルディス式の最大の特徴でした。普通に遠方の敵機を見ながら、同時にこの円環もはっきりと見ることができたのです。
それはどういう原理なのでしょうか。これから見ていきます。
ピントが合わない原因となる「光線の角度」
まず大前提として、
遠くにあるものと近くにあるものでは光線の角度が異なる、よって同時に目のピントが合わせられない
という点を理解してください。
図にすると[図4]のようになります。
自然光は物体から放射状に発光し、反射します。よって人間の目のように同一面積で受光する場合、物体までの距離によって受ける光線の角度が変わります。
[図4]の上図のように至近距離からなら強い角度を持って受光部に当たり、遠距離になるほどその角度は小さくなります。
最終的に距離が一定以上になると、ほぼ平行線の光線を受けることになり、これを平行光と呼びます。
人間の目の場合、10メートル以上も離れれば、光線の角度はほぼゼロ、すなわち光は平行光に近くなり、その先は無限遠(むげんえん)に至るまで平行光となります。
カメラのピントが近距離では精密な調整を要求されるのに、一定距離から先はほぼ一緒になってしまうのはこれが理由です。
対して、至近距離から来る光は強い角度を持ち、人間の目やカメラのレンズを通して遠距離にある物体と同時に結像することは不可能です。
しかし逆に言えば、「距離は本質的な問題ではなく、その光線の角度が問題」ということになります。そして人類は幸いにして、光学レンズという光線を曲げる道具を持っていたのでした。
全ての回を楽しく拝見させて頂いています!
実際に覗き込んで見える様子や種類について、自ら調べるには相当な知識を要する為、今後も様々なものを紹介して頂けると嬉しいです。
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記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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