
しかし、プリブリーフィングが終わって離陸するまでの過程についても、安全で効率的な運用のために、手順やルールが事細かに決められている。
「戦闘機パイロットの世界」を奥深く知ってもらうために、数回にわたって準備過程ついて紹介してもらう。
パイロットの基本はツナギの飛行服
プリブリーフィングが終われば戦闘機に向かいますが、その前に飛行用装備品を身に着けます。
まずは飛行服(フライトスーツ)ですが、通常、パイロットは朝からツナギの飛行服を着ています。とても着心地良く、どう動いてもずれませんし、パイロットにはとても便利な服装だと思います。
トイレのとき全部脱がないと用を足せないのはちょっと不便ですが(笑)、できれば出勤退社も飛行服にしたいぐらいです(飛行服での通勤は安全上禁止されている)。ちなみに夏用と冬用の2種類があります。
私が現役の航空自衛隊パイロットだった頃は、飛行服は救難機の捜索でできるだけ発見されやすいように目立つオレンジ色でしたが、その後、作戦重視となり、敵性国に発見されないように深緑の国防色に変わりました。冬場でなければ飛行服にGスーツを装着してハーネスを背負えば、服装は完了です。

冬場は耐寒・耐水服も着る
問題は冬場です。冬場にベールアウト(射出)した場合、下はたぶん冷たい海。飛行服だけだと30分ぐらいが限界でしょう(低体温症になってしまうため)。
そこで冬場は厚めの下着を着て、その上に耐寒服と耐水服を装備します。これらはすべてパイロットの体型に合わせて貸与されます。


特に耐水服は、首や足首、手首の太さに合わせて作られますので(ゴムをカットをする)、他のパイロットが使用することはできません。
もっとも、これらは自己管理ではなく、救命装備係が管理・保管していますので、救命装備室に行けば自動的に準備されています。なお耐水服はぴったりにできているツナギなので、一人では着ることができません。そのため、どうしても救命装備担当者に手伝ってもらう必要があります(まあ、私の体が昔から硬かったせいもありますが……)。
ちなみに海上自衛隊さんのパイロットの耐水服はもっと真剣で、足まで覆われる耐水服です。耐水服に長靴が最初から一体化されているイメージです。冷たい海水に浮かんでいる状況では足先から冷えるので、かなりの効果があると思います。

でも一番の問題点は、ハンガーにつるされているのを見ると、赤い着ぐるみの抜け殻が干してあるようで、なぜか笑えることでしょうか。
当然、耐水服や耐寒服を着た場合は、体は自由には動きません。後方などはかなり無理をしないと見ることができないので、空中戦などする場合はかなり体力が必要となります。
コメントを残す