第1回 現代戦車の装甲は意外と脆い!?──戦車の車体構造

本連載は、「現代戦車はどう戦うか」といった部分にのみ特化して解説していくものです。

アメリカ陸軍などで公開されている資料などを基に、内部はどうなっているか、砲弾をどう装填して、どう照準を付けるか、どのような防御戦術を採るのかといった、戦い方に関するディープな内容を余すことなく紹介していきたいと思います。

早く戦車の操縦室や戦術を読みたい!という読者もいると思いますが、まず最初は戦車とはどのようなものかを理解してもらう必要があるために、その構造から解説していきます。

戦闘教範を参考にした仮想戦闘

薄暗く朝焼けの立ち込める中、敵の部隊は戦車を先頭に、谷の低地へ向かって斜面を降りてくる。10両の戦車がおよそ100メートル間隔で、一列縦隊で進んでいる。その後方にはさらに10両のBMP歩兵戦闘車を中心とする後続集団が続く。

これを迎え撃つべく、我がC中隊のM1A1エイブラムス戦車が反対斜面に窪地を利用して遮蔽している。主砲口を窪地からのぞかせたハルダウンの体勢である。

ハルダウンとは岩や地面の起伏などの自然の地形を利用してひそみ、主砲の俯角ぎりぎりの高さまで車体下部を隠蔽することである。このとき、相手から見えうるのは主砲と砲塔の一部のみとなり、直射による交戦では最大の防御姿勢である。待ち伏せ攻撃のときに使用し、周囲に降車した監視兵を数名配置することが望ましい。

現代の戦車砲はFCS(Fire Control System:射撃統制装置)の進歩により、非常に命中精度が高い。そのため待ち伏せ攻撃を含め、戦車戦は非常に短時間で勝敗が決してしまう。

したがって、戦車部隊の指揮官は配下の各戦車に対し、的確に射撃範囲と目標を指示し、同じ目標に対して複数で攻撃するというムダがないようにすることが大切になる。目標は効率よく撃破するのだ。指示は、指揮官が隊内通信を用いて行なう(Illustration:坂本 明)

「T-72とBMPが近づいてきますね」

GPS(Gunner’s Primary Sight:砲手用主照準器)のアイピースを覗いていた砲手が叫ぶ。GPSの熱映像装置を通して、近づいてくる戦車が車体後部上面から排気煙を上げているのがくっきり浮かび上がっている。T-72だ。

中隊長は、敵の戦闘部隊が谷の低地に下りたところで、後続部隊と隔離して戦力を分断し、おもいきり先頭部隊を叩き、敵をパニックに落とし入れるつもりだった。

しかし、1個中隊(中隊本部を含めて14両のM1A1で構成)だけで、これだけの敵をやるには荷が重い。大隊長に攻撃ヘリを要請したが、出払っていてすぐにこっちへ回す分がないという。しかし大隊長は砲兵隊の支援を約束してくれた。

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坂本明軍事ライター、イラストレーター
(さかもと・あきら)
長野県出身。東京理科大学卒業。
雑誌「航空ファン」編集部を経て、フリーランスのライター&イラストレーターとして活躍。
著書に『最強 世界の歩兵装備パーフェクトガイド』『最強 世界のジェット戦闘機図鑑』『最強 自衛隊図鑑』『世界の軍装図鑑』(学研プラス)など多数。
1/28に最新刊『最強 世界の空母・艦載機図鑑』(ワン・パブリッシング)を出版。