第1回 第6世代戦闘機は無人機か? 有人機か?──有人機の補佐役から競合相手へ

第6世代戦闘機はどのような機体になるのか。第5世代機と何が違うのか、有人機か無人機か……、これらは誰にも分からないことです。
本連載は、米国の軍高官や専門家はどういった発言をしてきているのかを丹念に追うことで、次世代航空優勢(NGAD)計画の方向性や米軍が想定する将来の戦い方について考えていくものです。
その上で、「デジタルセンチュリーシリーズ構想」について詳しく紹介します。なにかと批判の多い構想ではありますが、断片的な情報しか知らない人も多いと思いますので、改めてその背景から掘り下げてみたいと思います。

次世代機は無人機か? 有人機か?

ソーシャルメディアなどを見ていると、次世代戦闘機について、さまざまな意見を見ることができる。例えば、次のような類の発言だ。

「F-35のような有人戦闘機はもう古い。これからは無人戦闘機の時代だ」
「中国軍のような強い敵を相手にしたときには、遠隔操作の無人機は通信妨害されてしまう」
「AI(人工知能)は、まだまだ人間には勝てない。だから次世代機も有人戦闘機だ」

現在の米空軍は、2030年代の航空優勢を想定して、次世代戦闘機の研究に取り組んでいるところだ。では、次世代の航空戦で米空軍が主に考えているのは、次の3つのうちどれだろうか?

(1)無人機
(2)有人機
(3)有人機と無人機でチームを組む

答えは(3)である。米空軍は数多くの無人機で、数の限られた有人機を補って戦おうとしている。

中国のような強敵相手には、遠隔操作の無人機は通信が妨害されてしまうかもしれない。無人機の操作ができなくなった場合、人間の介入なしに無人機に搭載された人工知能にどれだけの自律行動ができるのか? という疑問がわく。

 

当時、米海軍長官だったレイ・メイバスが、次のように話した。「(F-35が)ほとんど確実に、海軍省が購入したり飛ばしたりする最後の有人攻撃戦闘機になるだろう」(「USNI News」2015年4月15日付)

2009年12月、ロッキード・マーティンのフォートワース工場で生産ラインを視察し、F-35B/C用の降着装置の説明を受けるレイ・メイバス(Ray Mabus)海軍長官(在職2009〜2017年)(Image:U.S. Navy)

変わりつつある無人機への認識

しかし、その発言は2015年のことだ。最近では米海軍上層部の考えに多少の変化が窺える。

試作実験機であるX-35が2000年にテスト飛行してから、量産型であるF-35Cの最初の現役飛行隊である第147戦闘攻撃飛行隊(Strike Fighter Squadron147)「アルゴノーツ」が実際にUSSカール・ヴィンソン(CVN-70)に展開するまでに約20年かかった。

リモア海軍航空基地で整列する第147戦闘攻撃飛行隊のF-35C。2019年2月28日、海軍航空部隊司令官らがF-35Cが初期作戦能力(Initial Operating Capability:IOC)を取得したことを宣言した(Image:U.S. Navy)

2020年11月9日付けの「USNI News」では、米海軍の次世代航空団の取り組みは、無人機にとても重点が置かれており、マイク・ギルディ海軍作戦部長は無人機を大いに支持しているとしている。

ギルディ大将は言う。「2045年に有人機で空対空戦闘を行なうのか? 私はそれが大問題だと思っている」「もしも第6世代機を有人にするなら、開発と引き渡しの期間はF-35Cよりもはるかに短くしなければならない」

2045年といえば、レイ・カーツワイルが「シンギュラリティ(技術的特異点)が起こる」と唱えている年である。シンギュラリティが起これば、人工知能自身に致死性の攻撃を決定させる権限を与えるのか、という法や倫理的問題があるかもしれないが、おそらく有人戦闘機の出番はほとんどなくなってしまうかもしれない。

戦闘機は新しくなるほど、開発期間が長くなる傾向にある。もしも、試作機の初飛行から部隊の展開までに20年以上かかるとすれば、次世代戦闘機が実際の戦力になるのは2040年代になってしまう。

四半世紀後の人工知能がどうなっているか、正確な予測は難しい。現在、米空軍が次世代の航空優勢のための戦闘システムを構想しているのは2030年代の戦場である。特に断らなければ、本稿でも同じように2030年代の戦場を想定する。

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