「試験飛行」とは、どのように行なわれるのか。航空自衛隊と某飛行機製造会社で約30年テストパイロットを務めた筆者に、試験飛行の1日の段取りを紹介してもらう。
【実施可否の判断】すべての場所で天気の良くないと飛べない
自衛隊の航空総隊(実任務を行なっている部隊)パイロットとテストパイロットでは、その1日が異なります。私は航空自衛隊で約10年、某飛行機製造企業(以下、会社)で20年ほどテストパイロットとして飛びましたが、仕事内容が異なりますのでその1日も違ってきます。
まず、テストパイロットの朝は早いです。理由は一番使いやすい時間帯は航空総隊に割り与えられていて、試験飛行はその空き時間を使って行なわれるので、朝はめちゃくちゃ早くて、昼はちょうど昼食時期、夕方はかなり遅くまで飛ぶことになります。
朝は、いずれも全員参加のモーニングミーティングから始まります。ここで一番大事なのは当日の天気です。試験飛行は昼間VMC1(有視界気象状態)に限られますので、離陸する飛行場はもちろん、空域への飛行経路、当然試験エリアも雲のない状態でなければなりません。それに加えて、緊急時に着陸するであろう飛行場も、飛行中にVMCが維持されることが必要です。
ですから、毎日飛べるわけではないので、なかなか試験飛行は計画通りには進めません。この点は、曇りや小雨程度であればまったく関係なく訓練が実施され、対領空侵犯措置ではどんな天候でも離陸して任務を遂行する航空総隊とは大きく異なります。
ちなみに、試験飛行ではなぜここまで全経路での有視界状態を必須としているかというと、計器に頼らないで飛行可能である必要があるためです。言い換えれば、計器類がまったくなくても飛行できる気象条件で飛ぶということです。
飛行機は飛行試験が終了しなければ、何も保証されません。高度計も航法計器も何もかもが未保証状態では、雲の中を計器を信じて飛んでも、命の保証はないことになるのです。
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