プロジェクトを左右しかねないパイロットの体調
試験飛行はこのように、自分だけの問題ではなく、多くの関係者の仕事も左右します。そのため試行結果には、最大限の自信が必要です。また、諸元設定がちょっとでも違ってしまった場合には素直にレポートしないと、プロジェクトが間違った方向に進んで、これまた無駄な時間と費用を強いることになります。
テストパイロットにとって一番大事なのは、「嘘を言わないこと」、また「分からないことは理解するまで勉強すること」、そしてベタなことですが「健康管理」が大切です。
普通の社会人も健康管理は大切ですが、テストパイロットにとっての健康管理は、生活のすべてがフライトにつながっていることを意味します。例えば、テストパイロットは基本、深酒はしません(私は金曜日以外飲みません)。もし事故が起こって私の体の一部分からアルコールが検出されたら、事故原因は100%テストパイロットとなってしまいます。
テストパイロットは辛いよ
それと、飛行前1時間を切ったら何も口にしません。もし飛行中に食べたものが原因で腹痛でも起きたら取り返しがつきませんので、私は飛行前1時間以上前に食事をすることにしていました。一般の社員は「パイロットはいいよね、好きなときに食事ができて」と言っていましたが、そうではなくて命を守るために必要なのです、
さらに一番悪いのが、空腹で飛ぶことです。糖分不足で思考と判断が遅くなり、いざというときに時間に抜かれてしまいます。また海上に降りてしまった場合、空腹では体温維持をすることができなくなり、永遠に寝むることになってしまいます。
ですから、テストパイロットの健康管理とは一般的な健康管理とは違って、飛ぶためには、いつ何をした方がよりよいかを常に考えながら生活していくこととなるわけです。
連載「戦闘機パイロットの世界2」第6回─終─
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