次世代エンジンが米空軍をどう変えるか【米空軍のエンジン最新事情3/3】

米空軍のエンジン最新事情
第1回第2回ではF-35やB-21のエンジンについて述べてきた。
今回は将来F-35や次世代戦闘機に搭載されるかもしれない次世代エンジン「アダプティブエンジン」を取り上げる。
アダプティブエンジンはこれから3段階にわたって、米空軍の戦闘機を変えていくと考えられている。少しボリュームがあるが、それらについて順を追って紹介していこう。

繰り返しになるが、第1回でF-35の新エンジンとしては3種類が候補として挙がっていると説明した。

  • XA100(GE:ゼネラル・エレクトリック社)
  • XA101(P&W:プラット・アンド・ホイットニー社)
  • F135のアップグレード性能向上型

新しいエンジンの取り組みは、大きくは3段階にわかれている。まず最初のフェイズ1はF-35用エンジンの開発である。

次にフェイズ2では、このエンジンが徹底的にテストされ、データが解析されたのちに、次世代戦闘機用のエンジンに向けての取り組みが行なわれる。そして最後のフェイズ3では、エンジン開発で得られた新技術を既存の第四世代機へ応用することが見込まれている。

次世代エンジン計画(AETP)とは?

推力4万5,000ポンドクラスの次世代タービンエンジン技術に向けての取り組みであるAETP(アダプティブエンジン移行計画:Adaptive Engine Transition Program)は2016年に米空軍ライフサイクル管理センター(Air Force Life Cycle Management Center)によって立ち上げられた。

GEとP&Wの両社は、アダプティブエンジンの初期設計で、米空軍研究所(USAF Air Force Research Laboratory)の元で、大きな技術的業績をあげてきていた。2016年6月30日に、GE社とP&W社の2社と契約が行なわれており、オプションを含めて、それぞれ総額10億ドルの契約となった。

 

このエンジンは、既存の最新エンジンに比べて、燃費で25%、推力では10%が向上することが求められ、熱管理においても著しく改善されることが要求されていた。

GE社とP&W社は、ともにプロトタイプとなるエンジンの詳細な設計は終わっている。アダプティブファン制御の特徴は、エア・インレット(吸気口)からの気流について、必要とする質量流量を変化させるところにある。

このエンジンでは、可変サイクル技術により、速度や高度に応じてバイパス比を変えることができるようになる。超音速飛行時には、ほとんどターボジェット(超音速時に優れた性能を示す)のように大出力で動作し、亜音速で巡航して飛ぶときには、燃費を重視した旅客機のエンジンさながら、高バイパスのターボファンのように動作する。

エア・インレットから入った空気は、それぞれのモードに応じて流れが変わる。エア・インテーク側にあるエンジンの可変エリアは、吸気システムと排圧に連動して作動し、戦闘モードの高推力が必要とされるときには、コアエンジンに気流を流し、ファン圧力比が高められる。巡航モードで燃費を優先するときには、バイパス・ダクトへと空気の流れをそらし、ファン圧力比が低下させるようになっている。

状況によって気流の流れを変えるアダプティブエンジンの仕組み。取り込んだ空気を、戦闘モードではコアエンジンに気流を流し、巡航モードではバイパス・ダクトへと逸らす(緑や青の流れ)(Illustration:USAF)

GE社によると、XA100は高耐熱セラミック基複合材料 (Ceramic Matrix Composites: CMC)のような素材の導入により、エンジンはさらに高温で動作し、現在可能な圧力比よりもさらに高圧で動くことになる。

また、一般的には3D“プリンティング”と呼ばれている付加製造法(Additive Manufacturing:AM)が、広範囲にわたって使用されているという。

困難になりつつある冷却問題

近年の航空機は、複合材料の使用率が増えたことで、冷却がますます大変になっている。一般に複合素材は、アルミニウムより熱伝導率が40倍くらい低い。また、F-35のようなステルス機は、ステルス性能を高めるために機体の形状にも大きな制約があり、冷却が非常にやっかいになっている。

最新の高性能なセンサーやコンピューター処理システムなどのアビオニクスは、しばしば重たく、電気消費量が多く、発熱量が大きく、ますます熱管理へのハードルが高まっている。

将来、指向性エネルギー兵器が使われるようになれば、それも発熱する。F-35の開発・製造を行なっているロッキード・マーティン社は、2025年までにレーザー兵器を戦術戦闘機に搭載するために取り組んでいる最中だという。

昨今のレーザー兵器のエネルギー効率は、良くても33%程度で、あとの3分の2は熱になってしまう。アダプティブ・エンジンの3番目の空気の流れは、熱管理において余分の冷却能力を提供することができる。

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