第2回 音速を超えてからの加速テクニック

戦闘機パイロットの世界2
いよいよ音速を超えると抵抗も強くなり、F-4の場合はとくにマッハ1.4くらいからはそれまでのようにエンジン推力だけでぐいぐいと加速していくことは難しくなるとのことです。
そこで下降して位置エネルギーを速度に変換したり、逆に緩やかに上昇して高度を稼いだりと、加速のために細かな操縦テクニックが必要になってきます。

音速を超えてからの世界

あなたは無事に音速を超えたようです。

機種によって異なりますが、F-4ではスタティックソース(静圧の空気量)の警報が出る場合もあります。静圧空気(現在の高度での空気圧の空気)が足りないという警報です。
自動的にリセットされれば問題ありませんが、そうでない場合は、危険がありますので直ちに超音速飛行は止めるべきです。

飛行機にとって、静圧はとても大事な情報です。
また、最近の飛行機はコンピューターで制御されており、多くの装置が静圧空気を使っています。

しかし飛行中には静圧空気は簡単には手に入らないため、わざわざ静圧と同じ空気圧の空気を飛行機内でもつくっています。
それが不足すると、飛行機自体やエンジンの制御に大きな問題を発生する可能性を含んでいますので、超音速飛行は止めた方が無難でしょう。

いずれにしても、何らかの不具合を持ったまま超音速飛行に挑戦するのは止めた方が無難です。なぜならば超音速飛行に挑戦しているあなたの周りの環境は、人間が到底生きることはできない、超低温の空気のない世界ですから。

航空自衛隊のF-4EJ改(Photo:航空自衛隊ホームページよりトリミング)

衝撃波は目で見えるのか?

さて、話を進めましょう。
音速を超えると、なんか静かになったような気がしますが、たぶん気のせいです(笑)。

さらに加速を続けます。
マッハ1.2からエンジン効率が上がって、加速が良くなった気がしてきます。みるみる加速していきます。

音速を超えたら、横を見てみましょう。衝撃波が見えるはずです。
写真でよく見る白い壁ではなく、不連続になった景色が見えます。景色がある面で切れ、水平線が段違いになっています。たぶん、これが衝撃波でしょう。

また、コックピット横のインテークを見ると、インテークランプの上にも衝撃波の影を観察できます。

コクピットから衝撃波を見たときのイメージ写真。このように景色がある面で切れて、段違いになって見える(実際はこんなにはっきりと見えるものではなく、よ〜く見るとなにかずれている?と感じる程度です)

渡邉吉之・著
『戦闘機パイロットの世界
“元F-2テストパイロット”が語る戦闘機論

飛行時の体感から、計器・HUDの見方、エンジンスタートから着陸までの手順、空戦やマニューバー、失速や緊急時の対応方法まで!

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ABOUT US

渡邉吉之元航空自衛隊パイロット、テストパイロット
(わたなべ・よしゆき)
1951年東京都生まれ。防衛大学校を経て航空自衛隊へ入隊。第8航空団(築城基地)でF-4EJ、飛行開発実験団(岐阜基地)でF-15J戦闘機などのテストパイロットとして勤務。操縦経験機種は各種戦闘機のほか、グライダー、軽飛行機、練習機、大型輸送機、ヘリコプターなど30機種におよぶ。
1990年、F-2支援戦闘機の開発のために三菱重工業に移籍。新製機や修理機のテストフライトを担当し、設計の改善等をアドバイスする。1995年、F-2の初フライトを成功させる。その後、同社の戦闘機の生産拠点である小牧南工場の工場長などを務める。
著書に『戦闘機パイロットの世界』(パンダ・パブリッシング)、共著に『零戦神話の虚像と真実』(宝島社)がある。