加速しても、音速計上は遅くなる?
マッハ1.4付近からは、加速が弱くなります。空気抵抗が急激に増大するためでしょう。
これを短時間で乗り越えるために、迎え角を下げます。誘導抵抗(揚力と共に発生する抵抗)を少なくする方法です。迎え角計を見ながら、適切な値まで下げていきます。
飛行機の性能は、抵抗と推力のバランスで決定します。今、推力はもう一杯なので、抵抗を減らしていっているわけです。当然、抵抗が減るようにすると揚力も減ってしまうので、徐々に飛行機は降下していきます。
降下する飛行機は、降下分だけ推力を得ることになります。重力方向と飛行方向の角度から、前方へ行くベクトルの長さが大きくなります。
極端な例を挙げれば、飛行機が真下を向けば、自分の重さが推力となることが分かるかと思います。また、降下によって位置エネルギーが速度エネルギーに変換されるので、さらに加速は良くなります。
実際の速度が上がっても、「音速」の数値は低くなる!?
迎え角を減らすことによって抵抗が減り、かつ加速も良くなる。一見、これは良いことばかりに見えますが、実はここに落とし穴があります。
音速は基本的には密度・圧力・温度の関数ですが、上記の場合、一番影響するのが温度です。降下すると外気温度が上がります。温度が上がれば、音速も速くなります。
すると計器上の速度が同じでも、音速計上ではどんどん遅くなります。音速自体が速くなるためです。降下開始前はマッハ1.3だったのに、降下加速したらマッハ1.25になっていた、なんていうのはざらです。
戦闘に使う場合、音速よりも実際の速度の方が大事なので、エネルギーレベルが高くなる運動エネルギーを得た方が得です。しかし今日は音速での高速を狙うことが目的ですので、これでは達成できません。
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