第3回 危険な音速マッハ1.4から減速するテクニック

とてつもない衝撃のF-15のスピードブレーキ

ここでF-15のスピードブレーキの使い心地についてちょっとお話ししておきましょう。通常飛行しているときにスピードブレーキを開くと「ドドドドドド……」という体感があります。

一般の飛行機で降下するときに、主翼上面にスポイラーを立てて減速降下する装置がありますが、あの程度の振動ではありません。かなり大きな振動です。この振動は身体全体で感じるほどです。

着陸時、主翼上面のスポイラーを立てている旅客機(Photo:Mulag)

特にF-15ではスピードブレーキを開くと、垂直尾翼が大きく振動します。振り返って見ると、気流が乱れるためか、垂直尾翼が2枚同期して間隔が開いたり閉じたりして、左右に大きく振動することになります。このため設計後、垂直尾翼の構造を強化したほどです。

ただしF-15の場合によくやってしまうミスとして、タッチアンドゴー(着陸後に素早く再度離陸する動作)のときにスピードブレーキを閉じるのを忘れて、そのままパワーを出して離陸してしまうことがあります。それでもF-15はパワーが大きいので、特に大きな問題なく再離陸は成立しますが……。

渡邉吉之・著
『戦闘機パイロットの世界
“元F-2テストパイロット”が語る戦闘機論

飛行時の体感から、計器・HUDの見方、エンジンスタートから着陸までの手順、空戦やマニューバー、失速や緊急時の対応方法まで!

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渡邉吉之元航空自衛隊パイロット、テストパイロット
(わたなべ・よしゆき)
1951年東京都生まれ。防衛大学校を経て航空自衛隊へ入隊。第8航空団(築城基地)でF-4EJ、飛行開発実験団(岐阜基地)でF-15J戦闘機などのテストパイロットとして勤務。操縦経験機種は各種戦闘機のほか、グライダー、軽飛行機、練習機、大型輸送機、ヘリコプターなど30機種におよぶ。
1990年、F-2支援戦闘機の開発のために三菱重工業に移籍。新製機や修理機のテストフライトを担当し、設計の改善等をアドバイスする。1995年、F-2の初フライトを成功させる。その後、同社の戦闘機の生産拠点である小牧南工場の工場長などを務める。
著書に『戦闘機パイロットの世界』(パンダ・パブリッシング)、共著に『零戦神話の虚像と真実』(宝島社)がある。