第3回 危険な音速マッハ1.4から減速するテクニック

マッハ1.5だとほぼ直線にしか飛べない

ここで、超音速飛行そのものについてご説明しておきたいと思います。音速以上を出すことは、パイロットにとってはあまり意味を見出すことができない機動です。なぜならば超音速飛行では飛行機が自由に動いてくれないからです。

戦闘機はマッハ0.9ぐらいが一番元気です。思うように自由にグリングリン動きます。まあ、パイロットはきついのですがね(笑)。

 

しかし超音速飛行では、加速すればするほど飛行機の操縦は重くなって飛行機は動かなくなります。マッハ1.5以上では、ほとんど直線飛行しかできません。なんのためにぶっ飛ばしているのかって聞かれても、特に必要性を語れるほど理由が見つかりません。

その上、冒頭で説明したように膨大な量の燃料が消費されます。飛行機自体も多くの運用制限が加わり、空中戦どころではなくなります。しいて言えば、戦域から離脱するときは逃げ足が速い方が有利ですので役立つかも知れませんね。

ベイパーコーン(円錐状の水蒸気)のをつくりながら飛行するアメリカ空軍F-15E(ベイパーコーンは超音速飛行とは直接の関係はない)(Photo:Charles Caine)

また、私は試験飛行を行なうことが仕事であったので、日常的に超音速飛行して飛行機の限界確認などをしていましたが、航空自衛隊の一般の戦闘機運用パイロットは、不本意に音速を超えてしまうことがある程度で、たぶん自分の意志で音速を超える操舵はしていないと思います(通常任務で超音速飛行は百害あって一利なしです!)。

ましてマッハ2程度までの加速は空域の制限もあり、日本国内では数名が経験しているだけでしょう。次回からは、試験飛行についてお話をしましょう。

連載「F-2テストパイロットが教える 戦闘機パイロットの世界2」第3回─終─

渡邉吉之・著
『戦闘機パイロットの世界
“元F-2テストパイロット”が語る戦闘機論

飛行時の体感から、計器・HUDの見方、エンジンスタートから着陸までの手順、空戦やマニューバー、失速や緊急時の対応方法まで!

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渡邉吉之元航空自衛隊パイロット、テストパイロット
(わたなべ・よしゆき)
1951年東京都生まれ。防衛大学校を経て航空自衛隊へ入隊。第8航空団(築城基地)でF-4EJ、飛行開発実験団(岐阜基地)でF-15J戦闘機などのテストパイロットとして勤務。操縦経験機種は各種戦闘機のほか、グライダー、軽飛行機、練習機、大型輸送機、ヘリコプターなど30機種におよぶ。
1990年、F-2支援戦闘機の開発のために三菱重工業に移籍。新製機や修理機のテストフライトを担当し、設計の改善等をアドバイスする。1995年、F-2の初フライトを成功させる。その後、同社の戦闘機の生産拠点である小牧南工場の工場長などを務める。
著書に『戦闘機パイロットの世界』(パンダ・パブリッシング)、共著に『零戦神話の虚像と真実』(宝島社)がある。