第3回 大切なのは発射の衝撃を吸収すること!?──戦車砲のメカニズム(1/3)

閉鎖機──砲の後部を塞ぐ

砲に砲弾を込めて撃ち出すときは、砲の後部を塞いで弾体が一方へ飛び出すようにしなければならないが、この役目を果たすのが閉鎖機である。砲尾に取り付けられる閉鎖機は大別すると、隔螺式閉鎖機と水平(垂直)鎖栓式閉鎖機がある。

前者は砲尾と閉鎖機の両方にネジが切られており、閉鎖機を砲尾に押し込んで回転させることによりボルトとナットのような関係で砲尾部分が閉鎖される。

後者はもっと簡単な構造で、閉鎖機が上下あるいは左右に開閉して砲尾部を閉鎖する。ちなみに上下に動くものを垂直鎖栓式、左右に動くものを水平鎖栓式という。

左が、砲尾に閉鎖機で栓をするかのように閉鎖する隔螺式閉鎖機。右は閉鎖機を水平(左右)にスライドすることで砲尾を閉じる水平鎖栓式閉鎖機(この閉鎖機が垂直[上下]に動くものが垂直鎖栓式閉鎖機)。
火砲が金属薬莢式の場合、砲尾の閉鎖は薬莢によって行なわれるため比較的簡易な水平(垂直)鎖栓式閉鎖機で問題ないが、薬のう式の場合は砲尾の密閉は閉鎖機の塞環で行なうので隔螺式閉鎖機となる
(Illustration:Akira Sakamoto)[クリックで拡大]

火砲がどの形式の閉鎖機を使用するかは、その火砲の使用する弾薬によって決まる。砲弾は大別すると金属薬莢式と薬のう式がある。

前者は砲弾とそれを発射するための炸薬を充填した薬莢部が一体化されており、砲弾の取り扱いが容易という利点がある。一方、後者は砲弾と炸薬が分離しており、取り扱いは複雑だが目標との距離に応じて炸薬を調整できるという利点がある。

戦車の場合、狭い砲塔内で砲弾を装填するため、作業の楽な金属薬莢式の方が向いている。また戦車砲の閉鎖機の開閉は、砲弾を発射した反動で砲が後退する際に生じる力を利用して開鎖し、砲弾を込めると閉鎖するようになっているので、鎖栓式が一般的。


装填手によって砲弾が装填され、発射されるM1A2内部の様子。閉鎖機は垂直鎖栓閉鎖式で、砲手が砲弾を装填すると自動的に砲尾を閉鎖し、砲弾発射時の反動で砲が後退するとともに砲尾を開放して薬莢の底部分を排出する。閉鎖機の開閉は半自動式で手動でも行なえる。
ちなみに砲弾は燃焼式薬莢で、薬莢部分は発射薬の一部を固めて作ってある。点火されると内部の発射薬とともに燃焼してガスになってしまい、金属で作られた底部分のみが残って排出される
(YouTube動画「USA Military Channel 2」より。動画タイトルのクリックでYouTubeへ移動)

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坂本明軍事ライター、イラストレーター
(さかもと・あきら)
長野県出身。東京理科大学卒業。
雑誌「航空ファン」編集部を経て、フリーランスのライター&イラストレーターとして活躍。
著書に『最強 世界の歩兵装備パーフェクトガイド』『最強 世界のジェット戦闘機図鑑』『最強 自衛隊図鑑』『世界の軍装図鑑』(学研プラス)など多数。
1/28に最新刊『最強 世界の空母・艦載機図鑑』(ワン・パブリッシング)を出版。