F-35の新エンジン【米空軍のエンジン最新事情1/3】

航続距離のために望まれている新エンジン

このようにF135は実用量産エンジンとしては、今でも世界最高クラスと言っておかしくない。

しかし、特にアメリカ海兵隊は、F-35用エンジンの性能向上を望んでいるという。現在、P&W社の主なプロジェクトの一つが、F-35用エンジンの改修や長期的なアップグレードである。

F-35は小型のわりに重たい戦闘機だ。特に推力と重量の関係は、F-35Bのような短距離離陸垂直着陸機では非常にシビアである。アメリカ海兵隊が運用するF-35Bは、強襲揚陸艦で運用されるが、限られた甲板に着陸したりする場合には、ペイロードに制限ができる。

ワスプ級強襲揚陸艦「エセックス」から発艦するF-35B(Photo:U.S. Navy)

特に中東のような地域で運用する場合、非常に気温が高いと空気の密度が小さくなり、ジェットエンジンは推力が落ちることが知られている。そのような場合には、F-35Bを運用するために、しばしば最も簡単な方法がとられていた。つまりF-35Bの重量を減らすのだ。

そうなれば、当然、持ち運べる燃料の量やペイロードに影響する。可能ならば、もっと推力の高いエンジンに換装されることがのぞましい。

F-35については航続距離の問題もある。対中国本土との仮想戦においては、中国のA2/AD(接近阻止/領域拒否)のために、F-35が展開する空軍基地や、F-35に給油する空中給油機が危険にさらされる。米空軍協会ミッチェル研究所のデプチューラ中将(退役)などによれば、中国の戦いのときには、従来の空中給油機のような大型で鈍重な航空機は、中国本土沿岸から500海里(約926キロ)以上は離れて活動しなければならないとしている。

 

また、西太平洋で想定される戦域は、中東やヨーロッパよりも大きい。そのため航続距離の長い航空機が望まれている。航続距離を伸ばすためには、より燃費のすぐれたエンジンが望ましい。

F-35A用の増槽は、運べる燃料を約40%程度(600ガロン版×2の場合)、増やすことができ、F-35の航続距離を伸ばすことができるだろう。増槽は投下すればF-35は高いステルス性を取り戻すことができる。

しかし、ステルス機は設計初期の段階からステルスを意識して全体の形を決めなければならないので、後から余分なものを付け加えたままではステルス性は大幅に低下してしまう(ミッチェル研究所によると、F-35は増槽を装備したままでも、大型で鈍重な空中給油機より200海里(約370キロ)程度は中国沿岸に近づけるという。そこで増槽を捨てたとすれば、復路は機体内燃料タンクの燃料を使うことになるので、結局、戦闘行動半径が増えるのは100海里である)。

参考資料
「Aviation Week」2020年6月15-28日、2020年7月27日-8月16日、2020年9月14-27日の各号
「Flight International」2019年8月6日号
「Air International」2019年4月号

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