スイッチ類を確認する「インテリアチェック」
さて、ではエンジンスタート! と行きたいところですが、まだ点検があります。次にやるのはインテリアチェックと呼ばれる内部点検です。
皆様がご想像のように、コックピットには無数のスイッチなどがあります。実際に数えたことはありませんが、100~200個はあるでしょう。これらのスイッチがあるべき位置にあることを確認します。その多くはOFF位置ですが、ONであるべきものもありますので、すべてを覚えておかなくてはいけません。
これらすべてを、コックピット左後ろから左前、正面、右前、右後ろコンソール(操作卓)まで時計回りでチェックします。実際はパイロットが操縦席につく前に整備員さんがチェックしているので、ほぼ間違ったスイッチ位置になっていることはありませんが、この飛行機を見つめ直すためには大事な手順になります。特に試作機や試験機は一機一機違いますので、その違いを確認することにも役立ちます。
民間のパイロットは通常二人勤務ですので、一人が手順を読み上げてもう一人が確認する手順になっています。しかし戦闘機は一人乗りですので、すべてを自分一人でしなくてはいけません。
戦闘機乗りはそんなに賢くないのですべてを暗記することはできませんが、スイッチなどを見ながら点検するので、覚えることはそれほど苦行ではありません。また毎日同じことを繰り返してやりますので、そのうち自然にお経のように口ずさめるようになります。私の場合、40年前に乗っていたT-33の内部点検やエンジンスタート手順は今でも自然に出てきます(笑)。
油圧で動く装置には要注意!
また今の戦闘機(飛行機)には多くの安全装置が付いていますので、99%のスイッチはどこにあっても、エンジンスタートで壊れるようなことはないでしょう。
ただし油圧関係で動く装置は、エンジンが回り始めると同時に、ダイレクトに油圧がかかって動きますので注意が必要です。
例えばスピードブレーキなどは小さなスイッチなので、間違いが起こりやすく、近くに整備員でもいれば大事故になってしまいます(通常スピードブレーキは外部点検で中に油漏れがないかを確認するため、無理やり開いた状態1になっています。エンジンがかかれば、すぐに閉まり始めます)。もっとも整備員の方々もその辺のことはよく知っているので、エンジンスタートするときは飛行機には近づかないと思います。
まあ、安全装置についてはしいて言えば、脚ハンドルがダウン位置にあるとか、アーマメント関係のスイッチがすべてOFFになっているとか、酸素供給装置がちゃんと動いているとか程度は確認しましょう。
余談ですが、F-15ではインテリアチェックが終わった後にダメ押しの「VERIFY」(確認・点検)という手順が定められています。これは本当にそこの位置にスイッチやレバーがないと、やばいことになる項目が15項目ほどリストアップされています。
例えば緊急投下装置や緊急空中給油スイッチなど、緊急用装置がONになっていると電源投入と同時に作動してしまう危険があるので、これだけは再確認しなさいということです。どんなに忙しくても、これだけは再度確認したほうが良いと思います。自分でダブルチェックですね!
とても勉強になり、楽しいお話をありがとうございます。(M様)
少し前に、嘉手納のF-15Cを遠くから撮影したYoutube動画を見たのですが、パイロットがヘルメットを被らず(キャノピーは閉まってます)、ひざの上にヘルメットを置いてタキシングを始めたんです。
全機ではなく2機くらいのパイロットがやってました。
あれは何だったんだろうと・・ 撮影した人も、あんなの初めて見たとおっしゃってました。