第9回 武装と油圧で動く装置には要注意!──③インテリアチェック(内部点検)

足首→サバイバルキット→パラシュート→安全ベルトを接続!

座席に座ったら、自分の体と座席を装置でつなげていきます。

まず、今はほとんどの機体で足首を固定する装置を取り付けます。通常左右1組ですが、F-4は二つが一組で、左右で4本つなぐ必要があります。これを怠ると、ベールアウトしたときに足だけ飛行機に置いていったり(!)、足がふらふらしていると重心位置が動いて安定した姿勢で打ち出されなかったり、風圧で足の骨が折れちゃったりする可能性もあるので必ず付けましょう!

次はハーネスですが、4ヵ所の固定ポイントがあります。まず腰の左右部分の接続部分を座席内に収納されているサバイバルキット(一人用ゴムボートや便利グッズ)とつなぎます。サバイバルキットの位置はお尻の下になります。

さらに、両肩の部分にパラシュートとつなぐコネクターがそれぞれありますから、これと頭の後ろに搭載されているパラシュートと接続します。

そして最後に、自分の体と座席に固定する安全ベルト(シートベルト)をしっかり閉めます。安全ベルトは旅客機の乗客用のように下腹部に巻くタイプで、それをはるかに頑丈にしたものです。あまり緩く締めていると、飛行は楽ですが、機体が大きく運動するときなどに頭をキャノピーに打ち付けることになります。

また、ベールアウトする場合にはしっかり座席に固定されていないと、命の保証はありません。ちなみにサバイバルキットへの接続は自動ロックなので差し込めばOKですが、パラシュートの金具は自動ロックではないので、確実にロックさせるためには整備員さんの補助が必要です。

整備員の手を借りてハーネスなどを接続する航空自衛隊のF-15Jパイロット。接続した後も、整備員がグイグイと引っ張ってすぐに外れてしまわないかを念入りに確認している(Image:YouTube「航空自衛隊チャンネル」動画からのスクリーンショット。画像クリックで動画へ移動)

 

座席に自分を縛り付けたら、Gスーツの左側から出ているホースを機体とつなげてヘルメットをかぶり、(ヘルメットからの)インターフォンコネクターのコードや酸素系統のホースを接続。機体によっては、秘密の電線をつなげたりします(笑)。
(なお差し込み口は、Gスーツ系統は機体左側に、ヘルメット系統は機体右側にある)

米軍パイロットの腰あたりからぶら下がっているのがGスーツのホース。これを着席後に機体につなげる(Image:DoDの動画からのスクリーンショット)

これらが完成し、初めて機上の人となります。パイロットがすべて装着したのを確認すると、整備員は最終確認をし、サムアップして機体から降ります。

渡邉吉之・著
『戦闘機パイロットの世界
“元F-2テストパイロット”が語る戦闘機論

飛行時の体感から、計器・HUDの見方、エンジンスタートから着陸までの手順、空戦やマニューバー、失速や緊急時の対応方法まで!

1件のコメント

とても勉強になり、楽しいお話をありがとうございます。(M様)
少し前に、嘉手納のF-15Cを遠くから撮影したYoutube動画を見たのですが、パイロットがヘルメットを被らず(キャノピーは閉まってます)、ひざの上にヘルメットを置いてタキシングを始めたんです。
全機ではなく2機くらいのパイロットがやってました。
あれは何だったんだろうと・・ 撮影した人も、あんなの初めて見たとおっしゃってました。

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渡邉吉之元航空自衛隊パイロット、テストパイロット
(わたなべ・よしゆき)
1951年東京都生まれ。防衛大学校を経て航空自衛隊へ入隊。第8航空団(築城基地)でF-4EJ、飛行開発実験団(岐阜基地)でF-15J戦闘機などのテストパイロットとして勤務。操縦経験機種は各種戦闘機のほか、グライダー、軽飛行機、練習機、大型輸送機、ヘリコプターなど30機種におよぶ。
1990年、F-2支援戦闘機の開発のために三菱重工業に移籍。新製機や修理機のテストフライトを担当し、設計の改善等をアドバイスする。1995年、F-2の初フライトを成功させる。その後、同社の戦闘機の生産拠点である小牧南工場の工場長などを務める。
著書に『戦闘機パイロットの世界』(パンダ・パブリッシング)、共著に『零戦神話の虚像と真実』(宝島社)がある。