K-14ジャイロ式照準器のパーツ解説(前半)
[図5]はアメリカ陸軍が利用したK-14ジャイロ式照準器で、そのマニュアルから引用したものです。ちなみにアメリカ海軍では、ほぼ同じものをMk 18の名前で採用していました。
そのルーツはイギリスのフェランティ(Ferranti)社が開発したジャイロ式照準器なのですが、結構大きく手が入れられており、イギリスが主に使用したMk IIジャイロ照準器とはかなり異なったものになっていました。
パーツごとに見ていきます。
①45度の角度で取り付けられたガラス反射板(Reflector Plate)
[図5]では後ろに暗い遮光ガラス、さらに日よけの屋根まで付いて大袈裟な構造になっていますが、実際は手前のガラスだけで運用可能です。
注目してほしいのは、反射ガラスが横長な点です。これはジャイロ軸の先のモノと照準点の二つのレティクルを投影する必要があるからです。この点はまた次回で詳しく見ます。
②測距用のレティクルの大きさを調整するダイヤル(Span Dial)
第2回で射程を確かめる測距はレティクルの円環の大きさで行なうことを説明しましたが、ジャイロ式の場合はこれが極めて重要になってきます。
従来なら敵機が射程内に居れば問題なかったのですが、ジャイロ式照準器では未来位置を空間内の一点に絞って予測するため、ドンピシャの距離に居ないと当たりません。射程内に捉えただけではダメであり、キチンと弾道集中点の距離に捉える必要があるのです。
このため敵機の大きさに合わせてレティクルの大きさを変え、その円環内一杯に見えたとき以外は射撃禁止という厳密な測距を行ないます。そのレティクル調整ダイヤルがこれです。
ちなみにアメリカ式ではダイヤルにフィート単位の目盛りが書かれていて、それを敵機の数値に合わせます。[図6]
一方、イギリス式の場合はドイツ側の戦闘機や爆撃機の機体名がダイヤルにあり、そこに合わせるだけでいいようになっていました。
ついでに敵機の大きさをこれで指定した後、スロットルに付いているグリップを回転させると、600~2,400フィート(約183~731.5メートル)の距離で見える大きさに円環を随時変化させることが可能で、これを使って簡単な測距もできました。[図7]
ちなみに時計回りに一番奥までグリップを回した状態が600フィート、反対側に回し切った状態が2400フート、その中間が1500フィート(約457メートル)でした。高速で飛行する戦闘機ではあっという間に距離が詰まるので、それ以上の細かい精度は求められてなかったようです。
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