第2回 戦闘機が戻ってきてからも大忙し!? スクランブル後の点検・整備手順 
連載「元F-15機付長が語る 戦闘機整備員の世界」

ハンガーに駐機させたらプリタクシーチェックを開始

タイヤの点検が終わったら、(ハンガー内の)駐機ポイントまで再度進ませて停止。チョークイン(車止めをする)した後にクルーチーフはインターホン・ケーブルを接続し、次の発進に備えてプリタクシーチェック(Pre-Taxi Check:離陸前の作動確認)を開始する。

プリタクシーチェックとEPOの順番は少しややこしいが、通常であればまずEPOを完了して、次の飛行前にプリタクシーチェックを行なうのが普通。しかし本稿のように帰投後すぐに機体を5分待機にする場合は、エンジンカットをする前にプリタクシーチェックを行ない、その後にEPOを実施することになる。

スピードブレーキやフラップ、フライトコントロール、トリムなどの項目をすべて終了して、燃料ドレンにホースを付けたらエンジンをカット。

燃料ドレンは胴体下後方にあり、エンジンカットの際にラインに残った燃料が排出(1〜2リットルくらい)される。そのままエンジンカットするとエプロンや格納庫の床が燃料で汚損するので受け止めるわけだが、専用の用具はないので各飛行隊で自隊製作をしている。したがって形態はまちまちである。

 

エンジンが停止したら、ラダーステップ1をかけて(パイロットが降りる前に)コクピットに駆け上がる。そこでミサイルのアーミングレバーをセーフ位置にして安全ピンをとり付け、機関砲やシートにも安全ピンを装着。パイロットが装具を外す補助を行なって、コックピット内(F-15Jの場合はコックピット後ろのNo5機器室)に収納してあるDDFORM(記録書類ファイル)も回収する。

その後、必要なアクセスパネルをオープンしてEPOを開始する。なお、1日の終わりにはEPOではなく、BPO2(Basic Post-flight Inspection:基本飛行後点検)という点検項目の多い点検を行なうことになる。

ちなみに、F-15はエンジンパワーがあるため、ブレーキを踏んでいないとエンジンがアイドル回転でも前進してしまう。そのためチョーク(車止め)を取り外す際、前のチョークにタイヤが食い込んでいることが多い。

そこでチョークアウトの際にはまず車輪後ろのチョークを外し、そのチョークを前のチョークに勢いよくぶつけて外すということをする。これはアラートだけではなく通常のエプロンでもそうなので、見る機会があればそこに注目して見ると面白いかもしれない。

脚注

  1. ラダーステップ……パイロットが乗り降りするためのはしご。通常はラダーと呼ぶことが多い
  2. BPO……EPOより全般的に点検項目が多く、特に電源を入れての点検が増える。所要時間は整備員3人として、EPOがおおよそ30分くらいなら、BPOはそれにプラス15分くらいになる

1件のコメント

現場の状況が見えるような記事で非常に興味深く読ませていただいております。順調に連載されることを期待しております。

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ABOUT US

渡辺悟志元航空機整備員(航空自衛隊)、イラストレーター
(わたなべ・さとし)
F-15J/DJ、F-4EJの航空機整備員として2002年まで航空自衛隊第7航空団飛行群に22年間勤務し、機付長から同乗検査員、フライトチーフまでを歴任。整備経験のある機種はF-104J、F-1、T-33A、T-2、T-4。
航空機整備の傍、イラストの特技を生かして204飛行隊マークデザインや、パッチ等グッズデザイン、ミスティックイーグルなどの戦技競技会特別塗装、204飛行隊F-15改編10周年塗装などの記念行事特別塗装などを多く手がける。
現在はフリーイラストレーター/グラフィックデザイナーとして、ミリタリー以外のジャンルでも精力的に活動中。