第2回 無人戦闘機(AI)は人間パイロットに勝てるのか

AI副操縦士が人間パイロットを補佐する時代は近い

2020年12月16日には、ARTUμというコールサインを持つ人工知能が副操縦士として、人間のパイロットと共にU-2Sで飛行した。この実証試験では人工知能はレーダーを使い、単独で地対空ミサイルを探した。

しかし、ローパーは言う。「U-2の人工知能の飛行は、ゴールラインでは全くありません」「ちょうど、スターターピストルが鳴ったところです」(「Aviation Week」2021年1月11-24日号)

ARTUμには、μZeroと呼ばれるゲーミングプラログラムが使用されていた。これは当初は、チェスを行なうための人工知能として知られていたものだ。空軍のU-2連邦研究所で数週間にわたって、百万回以上もμZeroのレーダー操作のシミュレートが行なわれ、訓練されたという。

2020年12月、世界で初めて人工知能ARTUμを副操縦士として搭載し、訓練任務を終えて基地に戻ってきたU-2S偵察機。人工知能はセンサーの操作と戦術ナビゲーションを担当し、パイロットが敵機を警戒している間に、敵の発射装置を見つける役割を担った(Image:U.S. Air Force)

チェスのソフトを強くするといったようなときに使われるシミュレーションによる訓練は、チェスといった極限られたゲーム内という特殊な環境で行なわれる。そのため、戦争で想定されるすべての事態を想定してゲーム化するのは並外れて困難だ。限られた状況しか想定していない人工知能の弱点を、対抗側がつくことのできる機会は非常に多い。

これは、人間が人工知能の裏をかけば、人工知能が単独で操る無人機を簡単に餌食にできることを意味している。

しかし特定の分野では、人工知能が人間より圧倒的に勝っていることも事実である。そのため、次世代の航空戦では人間と人工知能がチームを組んで、互いの弱点を補い合いながら協力して戦うことになる。

その場合、一例としては、人間が優れた意思決定を行なうことができるようにするために人工知能が使われるだろう。複数のプラットフォームやセンサーから集められた膨大な量のデータを、迅速に人間が意思決定を行なえる品質の情報にまで人工知能が変換する。

ゲームチェンジャーとなるAI副操縦士

ローパーは、次世代の有人戦闘機には人工知能の副操縦士が搭載されることを確信しているという。(「Breaking Defense」2020年12月18日付)

「有人機のパイロットが、無人機ウイングマンを敵が密集した空域に送り込み、自らは危険な場所の外にいることができるだろう」とローパーは言う。「それはアップルのSiriのように機能するだろう。コクピット内でパイロットが命令すれば、それに反応する。もしくはパイロットの命令を予測さえする音声作動式になるだろう」(「Defense News」2019年3月14日付)

BAEテンペストが構想しているバーチャル・コクピットのイメージ。人工知能が副操縦士のように人間パイロットを補助する(Image:BAE Systems)

U-2に搭載された人工知能副操縦士は、映画「スターウォーズ」のドロイドR2-D2にちなんで、R2と呼ばれている。ローパーは言う。「(人工知能の)最初のものは映画でイメージするような高性能なものにはならないと思う。しかし、それでも完全なゲームチェンジャーになるだろう」

「スターウォーズ」に出てくるドロイドR2-D2(写真左)とC-3PO(写真はロンドンで開催されたスターウォーズ展のもの)。2020年12月にU-2偵察機で飛んだR2と呼ばれた人工知能はユニット式にすることが想定されており、必要に応じてAI副操縦士として有人機に乗せることができるようになるという(Image:PIXY)

現在考えられている2030年の航空戦力についての疑問点は、有人機か? 無人機か? という話ではない。有人機と無人機のバランスをどうするかという段階にまできている。

ルイス・A・デルモンテ (著), 川村 幸城 (翻訳) 、東洋経済新報社, 2021年3月23日, ISBN : 978-4492444597、492ページ
連載「米国の軍高官・専門家から見る 第6世代戦闘機の行方」第2回─終─

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