第3回 次世代戦闘機は1機種ではなく、「システムの一群」!? ──次世代機はどのような機体になるか

次世代戦闘機を補う技術開発

世界中で登場しつつある地対空/空対空/対衛星攻撃兵器や、電子攻撃、コンピュータ・ネットワーク上の脅威、特に核武装したロシアや中国のような国に対抗しようとするなら、独力で攻撃を回避して問題を解決する特効薬や申し分のない次世代戦闘機は存在しないという。

代わりに、米空軍は多くの並行した技術開発への尽力を進める意向だ。開発する技術は、スタンドオフの距離から目標を攻撃したり、直接攻撃のために大きな航続力とペイロードを持つプラットフォームを含めた、一連のシステムの取り組みを進めさせるという。プラットフォームを発展させるために技術開発されるのは、新型のエンジン、エアフレーム1、直接エネルギー兵器2、そして極超音速ミサイルのような類いのものだ。

ロッキード・マーティンの協力のもと、米空軍研究所(AFRL)が研究開発している高出力レーザー兵器システムのイメージ(Image:Lockheed Martin)

 

F-22やF-35は確かに異機種と協力する能力をもっている。しかし、一般的な従来の戦闘機は基本的に攻撃を行なうのに必要と想定されるものが、すべて1種類の単一プラットフォームに装備されていた。

これまでの一般的な戦闘機では、

  • 目標を探知・追尾する「センサー」
  • 攻撃を判断する人間である「意思決定者」
  • ミサイル/爆弾などを実際に発射する「シューター」

の3つの要素が、基本的には、すべて戦闘機という一つのプラットフォームに集約されていた。しかし、このような機能は、NGAD計画においては、別々のプラットフォームに分散化されるかもしれない。

自己回復する通信ネットワーク

「航空優勢2030年飛行計画」の研究を率いたアレックス・グライクウィッチ准将のチームは、一連のシステム間で、キルチェーンを形成するための通信ネットワークの構成が可能であるという結論に至っている。(「War on the Rocks」2017年1月13日付)

これは、敵が通信を妨害してくるような環境においても、絶対に切れない通信ネットワークを実現できたり、あるいは常に最大の通信速度が維持できるという意味ではない。近年の進化したデジタル時代では、ソフトウェアで無線の波形とデータリンクを自由に変更することができる。

脅威度の高い環境(競争環境)でたとえ通信が妨害されるようなことがあっても、自律学習を利用することで、自己回復するネットワークを構築することが可能になるという。一部の通信が遮断されたり、劣化すれば、ネットワークはリアルタイムで再構成される。

「航空優勢2030年飛行計画」の研究プロジェクトを指揮した米空軍のアレックス・グライクウィッチ准将(Image:DoD)

例えば、A、B、C、D、Eと5つのプラットフォームがあったとして、A-B-Cでの通信が不可能になりキルチェーンが形成できないときには、A-D-Eといった代替のキルチェーンが形成される。現代のデジタル環境においては「周波数ホッピング」という、無線周波数を極めて短い時間で次々に変化させる技術がある。

通信規格も状況に応じて柔軟に変更される。通信規格の違いは、一般人でも多くの人がスマートホンで体験しているはずだ。通信規格は一長一短だが、スマートホンではLTE、Wi-Fi、4Gなどが状況に応じて選択される。

同じように、キルチェーンを形成するためのネットワークにおいても、例えば状況によって、通信速度は遅いが敵から見つかりにくいといった最適な通信規格が選択される。

(「第4回 次世代戦闘機の戦い方とは?(仮)」へ続く)

龐宏亮 (著), 安田 淳 (監修), 上野 正弥 (翻訳) 、五月書房新社, 2021年4月1日, ISBN : 978-4909542335、A5判328ページ
連載「米国の軍高官・専門家から見る 第6世代戦闘機の行方」第3回─終─

脚注

  1. エアフレーム……(エンジンを除いた)飛行機の機体。airframe
  2. 直接エネルギー兵器……指向性エネルギー兵器(Directed-Energy Weapon:DEW)。主にレーザー兵器やマイクロ波兵器、まだまだマイナーだがビーム兵器などを指す

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