vs. F-22A──状況認識能力や運用柔軟性など総合力では勝る
F-35Aの真骨頂といえるステルス性において、それを凌ぐ機体があるとすればF-22Aラプターをおいてほかにない。ロシアのSu-57や中国の殲20(J-20)などステルス戦闘機と称する機体はあるが、形状ステルス技術や素材ステルス技術においてどこまでアメリカに追いついている分からない現状では、過大評価しない方がいい。もちろん過小評価も禁物だが、本格運用が始まっていない以上、比較対象にはならない。
その点で、ステルス機としてのF-35AのライバルはF-22Aしかないのが現状だが、機体そのものが小型であるため、F-35AもF-22Aにはおよばないもののステルス性能はかなり高いようだ。
ステルス機の話題というと、RCSのサイズが鳥だ、昆虫だという記述をよく見かけるが、具体的にどのくらいレーダーに探知されにくいかイメージできるだろうか? アメリカの航空週刊誌「アビエーション・ウィーク」が5年ほど前に公表した記事はかなり具体的で、(Su-57をのぞけば)ロシアの最新型戦闘機、スホーイSu-35SフランカーE搭載のイルビス火器管制レーダーが、どのくらいの距離で探知できるかを機種ごとに比較した図があった。
例えば、F-15やSu-27フランカーなどの第4世代機は540〜600キロ離れていても探知されてしまう。F/A-18E/Fスーパーホーネットやユーロファイター・タイフーン、ダッソー・ラファールなどの4.5世代機でも、300〜400キロで探知可能。
その点、第5世代のステルス機はF-35Aは58キロまで接近しないと探知できず、F-22Aでは38キロ。どちらもAMRAAMの射程圏内で、最新の短射程空対空ミサイルが50キロ前後あることを考えると、探知できたときには相手のミサイルが飛んできていることになる。
F-22にも難点がないわけではない……
F-22Aは最大速度がマッハ2級で、マッハ1.5でアフターバーナを使わないスーパークルーズ(超音速巡航)が可能。エンジン排気口の推力偏向ノズルで常識外れの運動性を持っており、戦闘機としての性能ではF-35Aでも適わない。
しかし、F-35Aのマッハ1.6という最大速度は実用上、充分な速度性能で、F-22Aほどではないもののスーパークルーズが可能という見方が強い。なにより、火器管制レーダーのみのF-22Aに対して電子光学センサーを装備したF-35Aは現代航空戦の肝である「状況認識」能力において他機を大きく凌駕している。
また、F-22Aにはないビーストモードでの運用を考えると、運用柔軟性ではF-35Aに軍配を上げるしかない。F-22Aが200機ほどの生産にとどまり、F-35Aがその10倍近く生産される予定であることからも、軍用機としてどちらが優秀かは分かるはず。
さらに重要なことは、F-22Aが優れたステルス性を保持するための特殊なステルスコーティングは劣化しやすく、ただでも高額なライフサイクルコストを引き上げていることだ。ステルス性がやや劣っても、簡単に補修可能なステルスコーティングを施したF-35Aの割り切りこそが、その成功の理由だろう。
最近のラプターひどい機体いますよね pic.twitter.com/nSQQQtTNtu
— ANCIENT@お仕事募集中 碧き航路に祝福を…! (@AlertHangar) November 18, 2020
キャノピー前部分のコーティングが損傷してしまっているF-22A[右上のTwitterアイコンを押すとこのツイートへ移動します]
最強かどうかはともかく、F-35Aは最優秀な戦闘機であることは間違いない。
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