スタンドオフミサイルを自衛隊は運用できるか──長射程ミサイルの難しさとは?

難しいのは「指揮通信機能の構築」

しかし本当に難しいのは技術的に射程を伸ばすことではなく、その運用にある。

射程が伸びても、ミサイルのシーカや弾頭は特に変えなければならないことはないが、ミサイル発射に必要な目標情報の取得やミサイルへの指令の出し方には大きな違いを生じることになるからだ。

「12式地対艦誘導弾能力向上型」を「敵基地攻撃能力を有する巡航ミサイル」としているメディアもあるが、現在はあくまでもスタンドオフ攻撃が可能な地対艦ミサイルである(将来、その方向に発展させることも可能ではあるだろうが)。
また、巡航ミサイルとして敵ミサイル発射拠点などへ攻撃を行なう場合はまた論点が変わってくるので、本稿では敵艦艇への長距離攻撃の場合で考えることとする。

まず、SSM-1の射程が150~200キロと言っても、海岸にある地上レーダが敵の艦船を捉えることができるのは50キロ程度であることから分かるように、1,000〜2,000キロ遠方の目標情報は航空機や無人機などに頼らなければならない。

また、仮にミサイルが亜音速で1,000キロを飛翔するとなると、その飛行時間は約1時間になる。その間に敵艦は20~25ノット(時速37〜46キロほど)で航行していれば、直径100キロ程度の範囲のどこにいるか分からなくなる。そのためにはミサイルの発射後も敵艦の動きを追跡し、ミサイルに目標情報を送らなければならなくなる。

さらに、一般的にこの種の長射程ミサイルは、着弾直前に、向かっている目標が間違いないことを人間が見て確認する(これをman-in-the-loop機能と呼ぶ)。

このman-in-the-loopを実現するためには、ミサイルのシーカが捉えた目標情報を発射制御側に送る必要がある。このため発射制御側とミサイルの間には双方向のデータリンクを構成する必要がある。水平線のはるか遠方のミサイルとの間で双方向データリンクを構成するためには、それを中継する機能も必須になる。

つまり12式地対艦誘導弾を1,000キロや2,000キロと長射程化するためには、ミサイルの改良以上に、これら指揮通信機能の構成が必須になる。

米空軍のF-15Eから投下されたJASSM-ER。AGM-158 JASSMの発展型で、射程が900キロにまで延長されている(Photo:U.S. AirForce)

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藤岡智和日本安全保障戦略研究所上席研究員、防空システムアナリスト
(ふじおか・ともかず)
1944年生まれ、東京都出身。防衛大学校 13期。
対空ミサイルHAWK部隊の整備幹部を経て、陸上自衛隊高射学校でHAWKシステムの整備教官として改良HAWKの導入のため米陸軍防空学校に留学。
防衛省技術研究本部第1研究所レーダ研究室(当時)研究員として、電子戦などを担当。
その後高射学校研究員として、03式中距離SAMの構想段階から要求性能書作成までを担当。高射学校研究員として9年間勤務後陸上自衛隊中央システム管理運用隊長として、陸上自衛隊指揮システムの導入を担当。
1999年 退官(1等陸佐)。